"会社からの帰り道、いつもの道の真ん中に見慣れないものがいた。タコのような体に、たくさんの目がついた、絵に描いたような宇宙人だ。「我々は君を人類のサンプルとして連れて行く」と、そいつは言った。"
"人類のサンプル、ねえ。面倒なことになった。どうやって断ろうか。そうだ、こういうときこそ、昔営業研修で習った「フェイス・イン・ザ・ドア」戦法だ。まずは無茶な要求をして、相手に断らせる。"
"俺はニヤリと笑って言った。「いいですよ。ただし、条件があります。俺に、この銀河を支配させてくれるならね」"
"宇宙人は少し黙り込んだ。たくさんの目がそれぞれ違う方向を向いて、高速で何かを計算しているようだ。「ギンガ…シハイ…」ブツブツと呟いている。よし、困ってる困ってる。作戦成功だ。"
"俺は勝ち誇った気分で続けた。「どうです?無理でしょう?だから、俺を連れて行くのは諦めて、他の人を…」"
"俺の言葉を遮って、宇宙人が言った。「承知した」"
"「え?」俺は間抜けな声を出した。「いやいや、だから、銀河を支配…」"
"「問題ない。我々のテクノロジーを使えば、銀河の支配など容易いことだ。君を我々の新たな支配者として迎え入れよう。さあ、行こう!」宇宙船からまばゆい光が俺を包んだ。"
"待ってくれ。話が違う。俺はただ、家に帰ってビールを飲んで寝たかっただけなんだ。人類のサンプルになるのも、銀河の支配者になるのも、どっちもごめんだ!"
"こうして俺は、うっかり銀河の支配者になってしまった。明日の会議、どうやって休もうか。それが、支配者になって最初の悩みだった。"
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