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研究室の窓から
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"緑豊かな大学のキャンパスに、午後の柔らかな光が降り注ぐ。宗教哲学を専門とするパク教授の研究室のドアを、学生のユナが少し緊張した面持ちでノックした。「先生、創造原理について、もう少し深くお話を伺いたくて…特に『万有原力』という概念が、まだよく掴めないんです」"
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"教授はユナを席に促し、自らも向かいの椅子に腰掛けた。「万有原力か。壮大なテーマだね。簡単に言うと、この世界のすべての存在が、互いに関係を結びたがっている根源的な力、とでも言おうか。太陽が惑星を引きつけ、原子が互いに結びつくようにね」"
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"ユナは熱心にノートを取りながら尋ねた。「それは、物理学で言う万有引力とは違うものなのでしょうか?」教授は頷いた。「良い質問だ。物理的な力もその一部だが、もっと広い概念なんだ。例えば、私たちが美しい音楽に心を動かされるのも、誰かを愛おしいと感じるのも、この万有原力が心の世界で働いているからだと考えることができる」"
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"「そして、その万有原力があるからこそ、『授受作用』というものが生まれる」と教授は続けた。「主体となるものと、対象となるもの。一方が与え、もう一方が受け取る。この相互作用によって、すべてのものは存在し、発展し、繁殖していくんだ。例えば、花が蝶に蜜を与え、蝶が花粉を運ぶようにね」"
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"ユナは顔を上げた。「与える側と、受け取る側…。その二つの相互作用が、生命や発展の源なのですね」。教授は微笑んだ。「その通り。そして大切なのは、その作用が循環していることだ。蝶が運んだ花粉によって、花は新たな種子を作り、次の世代へと命をつなぐ。与えるものは、形を変えて再び与えられるんだ」"
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"教授は机の上のコーヒーカップを静かに持ち上げた。「このカップが『主体』で、ソーサーが『対象』だとしよう。カップはソーサーがあることで安定し、ソーサーはカップを受け入れることでその役割を果たす。二つが調和して初めて、一つの美しいセットとして機能する」"
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"「そして、この主体と対象の授受作用が、ある中心点を基盤として行われるとき、最も安定した理想的な関係が生まれる。その中心を神、あるいは宇宙の根源的な意志と捉え、中心、主体、対象、そしてその授受作用によって生まれた合性体。この四つの位置が調和した状態を『四位基台』と呼ぶんだ」"
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"ユナはしばらく考え込んでいたが、やがて口を開いた。「では、先生…今、こうして先生がお話してくださり、私がそれを学んでいるこの時間も、一つの授受作用と言えるのでしょうか?そして、私たちの間にも、何か『四位基台』のようなものが…?」"
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"教授は心から嬉しそうに微笑んだ。「素晴らしい。まさにその通りだ、ユナ君。私が持つ知識を君に与え、君は真剣な問いで私に新たな視点を与えてくれる。私たちの間にある『真理の探求』という共通の目的を中心として、美しい授受作用が生まれ、ここに小さな、しかし確かな四位基台が形成されているんだよ」"
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"「ありがとうございました、先生。世界を構成する力が、ただの物理法則ではなく、愛や調和に満ちた相互作用なのだと感じられました」。深く頭を下げるユナの向こうで、研究室の窓はキャンパスを染める夕日で黄金色に輝いていた。それはまるで、二人の対話が生み出した知の光のようだった。"
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