月影の手紙 | Gemini Storybook
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"むかしむかし、一人の青年が、手紙を書いていました。でも、何度筆をとっても、言葉が何も浮かんできませんでした。"
"部屋にただ、墨の香りが漂います。それは、書けない言葉の虚しさを、一層深くしているようでした。"
"書くべき言葉の代わりに、青年の心には、ただ愛しい貴方様の面影ばかりが、ゆらゆらと揺れていました。"
"夜になり、障子には、月のかげが一つだけ映りました。それは、まるで孤独な青年の心を、そのまま表しているようでした。"
"届かない想いだと知りながらも、青年の胸の痛みは、増すばかりでした。"
"「ああ、この想いは、いつになったら晴れるのだろうか。」青年はそう願いながら、空を見上げました。"
"せめて、夢の中でだけでも会いたいと、青年は目を閉じました。夢の中では、二人は会うことができました。"
"青年は、その切ない想いを、歌にしました。その歌は、誰にも届かないけれど、天まで届くように、と願いながら。"
"朝が来て、手紙は、何も書かれないままでした。"
"でも、青年は知っていました。たとえ想いが届かなくても、この痛みも、この想いも、全て自分の大切な宝物なのだと。"
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