BAJACOと僕 | Gemini Storybook
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BAJACOと僕 – Page 1
"2013年の3月、BAJACOと初めて出会った。1週間の長い仕事から名古屋の港にある家に帰ってきたときのこと。その子は、僕の駐車場でちょこんと可愛らしく待っていてくれたんだ。"
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BAJACOと僕 – Page 2
"ネットで見つけたときから、名前は「BAJACO」と決めていた。はるばる鹿児島から来てくれたんだから、ちゃんと挨拶しないとね。写真で見たとおりの美しい体。鹿児島のバイク屋さんのステッカーが貼ってあったけど、BAJACOが嫌がるかもしれないから、そのままにしておいた。"
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BAJACOと僕 – Page 3
"封筒には、純正のキーが2本。前の持ち主に、とても可愛がられていた証拠だ。少しだけ嫉妬したけど、BAJACOにまたがった瞬間に、そんな気持ちは消えてしまった。身長170センチの僕の足が、やっと地面につくくらい背が高いんだ。"
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BAJACOと僕 – Page 4
"大切なキーを差し込んでひねる。バッテリーレスだから、何の反応もない。チョークを引いて、キックペダルに足をかける。「ドドドド」なんと、一発でエンジンがかかった!やっぱり僕の直感は正しかったんだって、にやりと笑った。"
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BAJACOと僕 – Page 5
"ヘルメットをかぶる間も、BAJACOは「ドドドド」と小刻みに揺れながら、安定したアイドリングを続けている。またがってクラッチを握り、ギアを一つ下げると、「ゴン」と心地よい音がした。この音がたまらなく好きで、何度も繰り返して楽しんだ。"
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BAJACOと僕 – Page 6
"いよいよ、BAJACOとの初めてのデートだ。ゆっくりとクラッチをつなぎ、アクセルを開ける。「なんてじゃじゃ馬なんだ!」思わず叫んだ言葉が、風に乗って後ろへ流れていく。背の高いBAJACOから見る港の景色は、いつもと違って見えた。"
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BAJACOと僕 – Page 7
"ステップの上に立ち上がって、ぴょんぴょんと跳ねてみた。BAJACOは、鹿児島からの長旅なんて気にもしていない様子だ。巨大なコンテナをパイロン代わりにして、BAJACOの声を聞きながら、コーナーを駆け抜けた。"
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BAJACOと僕 – Page 8
"燃料のことを忘れていた!慌ててガソリンスタンドへ向かう。満タンにして、デート再開だ。子供の頃、友達と競争した懐かしい道へやってきた。スタートラインから、思いっきりアクセルを開けてみる。"
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BAJACOと僕 – Page 9
"時計のタイムはたいしたことなかったけど、BAJACOの加速感は、時計では測れない速さだ。乗った人にしかわからない感動。一度止まって、BAJACOの顔であるヘッドライトをつけた。大きな、二つの丸い瞳。BAJACOから降りて、その顔をゆっくりと眺めた。"
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BAJACOと僕 – Page 10
"「かわいい」ぽつりと、言葉がこぼれた。僕の中で「かわいい」と「かっこいい」は正義。だから、このBAJACOは僕の正義なんだ。まだ帰りたくない二人は、港に戻って、同じコンテナの周りをぐるぐると何周も回りながら、会話を楽しんだ。"